
「SESか、自社開発か」で悩むのは時間の無駄だ。
「合原さん、SESと自社開発、どっちがいいですか?」
「フリーランスになるべきか、会社員でいるべきか、本気で悩んでいます」
こういう相談、めちゃくちゃよく貰う。でも、ハッキリ言うけど、本気で自分のキャリアを考えているなら、その問い自体が「罠」であることに、まず気づくべきだ。
SES、自社開発、フリーランス。これらは、どれか一つを選ぶ「選択肢」じゃない。君が、この業界で自分の価値を最大化するために、戦略的に使いこなす「フェーズ」であり「ツール」だ。どの働き方が上かなんていう不毛な議論に、君の貴重な時間を使ってはいけない。
大事なのは、それぞれのメリットとデメリットを冷静に分析して、自分のキャリア設計図の中で、どう使い倒すか。今日は、その「設計図」の描き方を、全部教えてやろうと思う。
フェーズ1:SESは「最強の養成ギプス」として使い倒せ
まず、大前提として理解してほしいのは、SESという働き方は、キャリアのスタート地点として、あるいは方向転換の場所として、極めて優秀だということだ。日本のITエンジニアの半分がSESで働いている。これはつまり、この働き方が、業界のインフラになっているという紛れもない事実だ。
最大のメリットは、ありとあらゆる業界や技術に、ノーリスクで触れられること。普通の会社員じゃ、絶対に経験できないような多種多様なプロジェクトに参加できるんだ。これは、自分の「武器」が何なのかを見極める上で、とんでもない価値がある。
もちろん、今でもエンジニアを駒としか見ていない、旧時代的なSES企業は存在する。でも、それは「SESが悪い」んじゃなくて、君の「企業選びが間違っている」だけだ。実力に応じて給料が決まる「単価連動型」の会社を選べば、安定した給料を貰いながら、様々な業界の課題を覗き見することができる。これって、将来のための最高の「市場調査」じゃないですか。
フェーズ2:自社開発は「武器を研ぎ澄ます」ための道場
SESという戦場で、自分の戦い方と武器を見つけたら、次はその武器を徹底的に磨き上げるフェーズに入る。そのための最高の環境が、「自社開発」だ。自社開発の魅力は、一つのプロダクトに深く、長く関われること。自分が作ったサービスが世に出て、誰かの生活を変える。その喜びは、何物にも代えがたい。
一つのチームで、腰を据えて開発に取り組むから、専門性はどんどん深まっていく。SESで手に入れた幅広い経験の中から、「俺はこれで食っていく」と決めた道を、深く、鋭く掘り下げるためのステージだ。ただし、リスクもある。そのプロダクトが失敗すれば、君のキャリアも影響を受ける。特定の技術に特化しすぎて、気づけば時代遅れになっている、なんてこともあるだろう。
フェーズ3:フリーランスは「価値を換金する」最終形態
十分なスキルと経験、そして「こいつに任せたい」と思われるだけの信用(人脈)を築き上げた者だけがたどり着ける場所。それが、フリーランスという働き方だ。
魅力は、言うまでもなく圧倒的な「自由」と「収入」だ。スキルと交渉力さえあれば、会社員時代とは比べ物にならない金額を稼ぐことができる。でも、その自由には、厳しい責任が伴う。収入は不安定で、福利厚生もない。営業から経理まで、全部自分一人でやらなきゃいけない。
フリーランスは、楽園なんかじゃない。SESと自社開発で、血の滲むような努力をして実力を磨き、あらゆるリスクを自分でコントロールできると確信した者だけが立つことを許される、プロフェッショナルの頂だ。
結論:働き方を「選ぶ」な。自らの手で「設計」せよ。
もう、お分かりですよね。SES、自社開発、フリーランスの間に、絶対的な優劣なんて存在しないんだ。キャリアの最初に「SES」で多様な経験を積み、自分の武器を見つける。次に「自社開発」で、その武器を誰にも真似できないレベルまで磨き上げる。そして最後に「フリーランス」として、その価値を最大化する。
これが、これからの時代を生き抜くエンジニアの、一つの理想的なキャリアパスだ。受け身の姿勢で「どの会社がいいか」なんて悩んでいる暇があったら、自分のキャリアを、まるで一本の映画を作るように設計するんだ。君の人生の監督は、他の誰でもない。あなた自身だ。
